現役薬剤師のヒトリゴト

~クスリ・サプリ・健康・薬局の日常~

風邪に抗生物質(抗菌薬)は必要?不要?

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はじめに

日々薬局業務をしていると、内科の門前の薬局なので風邪症状の患者様はたくさんいらっしゃいます。

隣の内科の医師は一般的な風邪症状のときには抗生物質は処方しない医師なのですが、

みなさんのお薬手帳を拝見すると、他院では抗生物質が処方されているのを多く見かけます。

一般的な風邪には抗生物質は必要なのでしょうか?不要なのでしょうか?

今回は、風邪症状に対する抗生物質に関して勉強します。

 

抗生物質とは

抗生物質とは、細菌などの微生物を壊したり、増殖するのを抑えたりする薬のことをいいます。

初めて発見された抗生物質はみなさん1度は聞いたことがあるペニシリンです。その後ストレプトマイシンが発見されたことにより、不治の病として恐れられていた結核が克服されました。それからも多くの抗生物質が発見され多くの細菌感染症の治療に使用され、現在の医療に必要不可欠なものとなっています。

 

風邪に抗生物質は必要か?

まず一般的に風邪と言われているものは、正確には「風邪症候群」といわれる鼻やノドに起こる急性炎症で、鼻水・くしゃみ・咳などが主な症状です。その原因となるのはほとんどがウイルスによる感染です。

「風邪薬」といわれているものはあくまで熱や咳、鼻水などの症状を軽減するだけなのでウイルスに対しては効果はありません。

ウイルスに対する特効薬はなく、自身の免疫によって退治する以外に方法はありません。

 

抗生物質は先ほど述べたように「細菌」に効果がある薬なので「ウイルス」には効果がありません。

ではなぜこれほど風邪症状のときに抗生物質が使われるようになったのかというと、風邪をひいて体力が落ちてしまうと免疫力も落ちてしまい、その結果細菌に感染してしまういわゆる二次感染を予防するために以前は多く使われていたようです。

しかし現在では、この二次感染予防としての効果は期待できないことがわかっていますが、昔からの習慣というか思い込みが一般の方はもちろん医療業界にも根強く残っているのかもしれません。

 

抗生物質が必要なケース

ここまで風邪には抗生物質は不要とお伝えしてきましたが、風邪症状と区別がつきにくく細菌の感染が原因の病気もあります。その場合は抗生物質が必要なこともありますのでいくつか例を挙げたいと思います。

 

マイコプラズマ肺炎・・・肺炎マイコプラズマが原因。

            発熱・全身のだるさ・乾いた咳が特徴。

 

細菌性肺炎・・・・・・・肺炎球菌・黄色ブドウ球菌などの細菌が原因。

            発熱・全身のだるさ・湿った咳・黄色、緑色の痰が特徴。

 

百日咳・・・・・・・・・百日咳菌などの細菌が原因。 

            激しい咳が特徴。

 

溶連菌感染症・・・・・・A群溶血性レンサ球菌が原因。

            発熱・のどの痛み・扁桃炎・発疹などが特徴。

 

これらはほんの一部ですが、細菌の感染が原因の病気になります。

素人判断では原因が「ウイルス」なのか「細菌」なのかは判断は難しいので、

必ず医療機関で適切な検査を受けるようにしてください。

 

薬剤耐性菌の問題

薬剤耐性菌とは?

細菌が薬に対抗し生き残るために遺伝子を変異させたり、他の細菌やウイルスから抵抗性のある遺伝子をもらったりすることで薬が効かない新たな菌が生まれることです。

代表的なものを挙げると

・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE

多剤耐性緑膿菌(MDRP)

があります。

これらの薬剤耐性菌に効果がある抗生物質の研究も日々行われていますが、新たな薬が出てもそれに対する耐性菌がまた生まれてしまうというイタチごっこの状態です。

どの抗生物質も効かない菌が生まれてしまうと重篤感染症が蔓延してしまう危険性もあるので、今世界中で薬剤耐性菌は大きな問題になっています。

薬剤耐性菌の蔓延を防ぐには?

薬剤耐性菌の産出・蔓延を防ぐには医療関係者だけではなく、私たちにもできることはたくさんあります。一人一人の正しい理解と心掛けが何より重要です。

抗生物質を要求しない・・・風邪をひいたと思った時に、自ら医師に対して抗生物質を求めるケースがよくあります。医師が必要ないと判断したならば服用する必要はないので指示に従いましょう。

抗生物質を飲み残さない・・・症状が改善されると服用を中止してしまう話もよく聞きます。途中でやめてしますと元気で薬に強い菌が残ってしまい、耐性菌が生まれる原因になってしまいますので必ず飲み切りましょう(下痢などの副作用があった場合は中止してください)。

・残った薬を飲まない・あげない・・・飲み残した薬を、後日風邪をひいたときなどに服用したり、風邪をひいた知り合いに渡してしまうのも聞いたことがあります。治療目的にそぐわないと効かないだけどはなく、体内の腸内細菌のバランスが乱れ体調を崩しかねませんので厳禁です。

・体調を管理し感染を予防する・・・手洗いうがい、感染者との接触を避ける、ワクチンを接種するなど感染を予防するために日頃から注意をしましょう。

 

まとめ 

一般的な風邪の原因はウイルスなので、細菌に効果がある抗生物質では効果がないことがわかりました。

細菌感染が確認されたときには抗生物質は必要となりますので、そのときには医師・薬剤師の指示通りしっかり服用してください。

ウイルスにしろ細菌にしろ、感染症の予防・治療には免疫力が重要です。

食事・睡眠をしっかりとり、体調管理に努めましょう。

 

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