現役薬剤師のヒトリゴト

~クスリ・サプリ・健康・薬局の日常~

赤チンとの別れ~マーキュロクロム液製造中止へ~

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 こんにちは

先日、赤チンの国内製造が2020年末で終了になることが発表されました。

「まだ売ってたの?」と驚かれる方もいるかもしれませんが、三栄製薬(東京)が唯一製造を続けているようです。

昭和生まれの私としては、ケガをしたヒジやヒザを真っ赤に染めて、洋服についてしまってはお母さんが洗濯が大変なのが日常風景でしたが、現在では使ってる人も売ってるのも見かけなくなりました。

今回は赤チンについて振り返ってみたいと思います。

赤チンの歴史

まず、赤チンは正式名称ではありません。正式な商品名はマーキュロクロム液(成分名:メルブロミン)で、皮膚や傷の殺菌・消毒に用いられる局所殺菌剤です。

1900年代初期に発見されると、安価なうえヨードチンキより傷にしみないことから、世界中の家庭の常備薬として長らく使われてきました。ヨードチンキが茶色いのに対し、赤色だったことから「赤いヨードチンキ」と呼ばれ、略して赤チンとして浸透したようです。

しかし1900年代末期には、製造過程で水銀の廃液が発生することから使用を控えるようになり、原料の日本国内での生産も中止となります。

海外で製造した原料を輸入することで販売は継続されていましたが、マキロンなどの消毒剤の登場により、販売数は激減したようです。

それでも2019年現在も販売を続けている理由としては、高齢者を中心に根強い赤チンファンが多かったためです。

赤チン製造中止の流れ

全盛期ほどではないにしろ、ファンから愛されている赤チンがなぜ製造中止になるのか?

その理由は、国による規制です。

日本国内では原料の生産は禁止されてはいましたが、製造販売に関しては特に規制はありませんでした。

しかし、水銀による環境汚染の観点から、2019年5月いっぱいで日本薬局方から削除され、「日本薬局方」を記載したパッケージでは売れなくなり、販売するためにはあらためて承認審査を通さなければならなくなり、2020年末で「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」によって製造禁止になることが決定になりました。

(水銀を利用した体温計や温度計なども同様です。)

現在の赤チン製造状況

2018年までは三栄製薬だけでなく小堺製薬でも製造していましたが、今回の規制で2018年をもって製造を中止となりました。

三栄製薬は「日本薬局方」の表記を外したパッケージにリニューアルし、根強い赤チンファンのために2020年いっぱいまでは原料がある限り製造し続けるとのことです。

 現在のキズへの対処法 

 ヨードチンキ→赤チン→マキロンと、消毒剤の歴史がありますが、最近はどうなのでしょうか?

最近の主流は

消毒しないです。

理由としては

  • 消毒は傷を治そうとする皮膚の細胞にも害がある
  • 消毒で細菌を完全になくすことはできない
  • 多少細菌がいても傷は治っていく
  • 消毒することで逆に傷の治りが遅くなる

などがあげられます。

 傷口からでる血液や体液は修復するために重要な役割があることがわかっていますので、無理に取り除かずに傷口を水道水や生理食塩水などで洗い流した後は乾燥させないように傷を被覆材で覆って浸潤状態を作ることにより、自己再生能力を促すことにより、治りも早く傷跡も残りにくいことがわかっています。

被覆材はスーパーやドラックストア、ネットでも買えます。

 急なケガで家にないときは、ワセリンがあればワセリンを塗った上からラップで巻いておくと代用することができます。

最後に

赤チンファンにとっては販売中止は残念なニュースです。

今のうちにストックしておくために、今では店頭から商品がなくなりネットでも商品がなく買うことが困難なようです。

運よく見かけることができたなら記念に買っておくのも悪くないかもしれません。