【薬剤師】漢方薬の勉強【冷え性編】
漢方薬とは
漢方薬とは、生薬(植物や鉱物、動物由来)を数種類組み合わせて作られている薬のことです。
漢方の基本は、“病気ではなく人をみる”という考えなので、漢方薬は症状がある一部分だけを見るのではなく、全身の状態を総合的に見直し改善するための薬です。
現在、一般的に発売されてる漢方薬はエキス製剤と言われ、生薬を煎じ、濃縮して水分を除いて顆粒・粉末にしたものです。
よく例えられるのがコーヒーで
・ドリップコーヒー :昔ながらの煎じる漢方薬
・インスタントコーヒー:漢方エキス製剤
多少効果が落ちると言われることもありますが、飲みにくさはかなり改良されていると言っていいかと思います。
粉末が苦手な方には固めて錠剤にしたものもありますが、一度に飲む錠数が多いという欠点もあります。
同じ名前の漢方薬でも店頭販売している一般用と処方箋が必要な医療用がありますが、両者の構成成分は同じではなく若干異なります。
一般用は医療用よりも生薬の量が少なめで効果は控えめになりますが、副作用もその分少ないので使いやすいかもしれません。
漢方の考え方
「気・血・水」
人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つの要素で構成されていると考えられています。
・「気」、、、目には見えない体を支えるエネルギーのようなもの。自律神経に近い。
・「血」、、、全身を巡って組織や器官に栄養を与えるもの。主に血液。
・「水」、、、血液以外の体液全般、体を潤すもの。代謝や免疫にかかわる。
この3つは、お互いに影響しあい、バランス良くめぐっていることが大切です。どれかが多過ぎても少な過ぎてもいけません。
「証」
個々人が表す体力・体質・抵抗力・症状の現れ方などの状態を表すものです。
・「実証」、、、体力があって、抵抗力が強めの人のこと。
・「虚証」、、、体力が弱っていて、抵抗力が落ちている人のこと。
同じ病気であっても「証」が異なる場合、違う漢方薬を使うこともありますし、違う病気であっても、「証」によっては同じ漢方薬を使うこともあります。
詳しいことはこちらを参照してください。
漢方の考え方を理解するには知識以外にも経験も必要です。
漢方に詳しい医師・漢方薬局の薬剤師などに相談し、自分の症状に合った漢方薬を探すことが大事です。
漢方薬【冷え性編】
ここまで漢方について簡単ではありますが説明してきました。
全部読んでくれた方は難しすぎて自分では漢方薬を選べないと考えてしまうかもしれませんが、市販薬として一般的に販売しているので、薬剤師と相談しながらまず試してみて、合うかどうか判断してもらうのも1つの方法かと思います。
それでは、今回は冷え性に関する漢方薬をいくつか勉強していきたいと思います。
以前に、【日常生活編】を書いたものは
【薬剤師】漢方薬の勉強【日常生活編】 - 現役薬剤師のヒトリゴト
こちらなので興味がある方は見てください。
冷え性とは
冷え症は女性に多い悩みのひとつ。成人女性の半数以上は冷え症で悩んでいるとも言われています。とくに手足の先など体の中心から離れた部分(末梢)や、腰が冷えると訴える場合が多いようです。
女性の場合は、食生活や月経の影響で貧血気味の人が多いことと、女性ホルモンの乱れから自律神経がバランスを崩しやすいことから、冷えが起きやすいと考えられていますが、最近では男性の冷え症も増えているようです。
引用元:
冷え性に対する考え方は西洋医学と東洋医学では考え方が違います。
今回は、漢方薬の記事なので東洋医学(漢方医学)の考え方で話を進めていきます。
漢方医学的には冷えの原因として
・熱を作れなくなっている
・熱を運べなくなっている
大きく分けてこの2点があげられます。
「漢方の考え方」でも述べましたが、「気・血・水」の異常によって冷えが起こっている考えられるので、どのような状態かによって選ぶ漢方薬も変わってきます。
今回は状態別に漢方薬を並べたいと思います。
体力がなく、エネルギー不足によって熱を作りにくくなっている
手足が冷える・疲れやすい・体調を崩しやすい(風邪etc.)・寒がり。
十全大補湯
疲れがとれない・衰弱している人の気力と体力を補う
構成生薬:オウギ・ケイヒ・ジオウ・シャクヤク・ソウジュツ・センキュウ・トウキ・ニンジン・ブクリョウ・カンゾウ
人参養栄湯
体力が落ちている人の滋養強壮・血行改善に
構成生薬:ニンジン・トウキ・シャクヤク・ジオウ・ビャクジュツ・ブクリョウ・ケイヒ・オウギ・チンピ・オンジ・ゴミシ・カンゾウ
血行不良により、熱を運びにくくなっている
足腰が冷える・肩こり・便秘・生理痛・肌荒れを伴うことあり。
当帰芍薬散
肩こり、貧血や生理不順がある方
構成生薬:トウキ・センキュウ・ブクリョウ・ビャクジュツ・タクシャ・シャクヤク
温経湯
手足がほてる冷えに
構成生薬:ハンゲ・バクモンドウ・トウキ・シャクヤク・ケイヒ・ボタンピ・センキュウ・ニンジン・カンゾウ・アキョウ・ゴシュユ・ショウキョウ
加味逍遙散
のぼせ・肩こり・疲れやすい方に
構成生薬:サイコ・シャクヤク・ソウジュツ・トウキ・ブクリョウ・サンシシ・ボタンピ・カンゾウ・ショウキョウ・ハッカ
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
手足の冷えを伴い、腹痛、頭痛、手足の痛みがある方に
構成生薬:トウキ・ケイヒ・シャクヤク・モクツウ・サイシン・カンゾウ・ゴシュユ・タイソウ・ショウキョウ
水分代謝が悪くなり、体を冷やしている
下半身が冷える・むくみ・頻尿・耳鳴り・頭痛などを伴うことあり。
苓姜朮甘湯
めまい・ふらつきがある人の冷えに
構成生薬:ブクリョウ・ソウジュツ・ケイヒ・カンゾウ
当帰芍薬散
めまい・むくみ・生理不順の方に
構成生薬:トウキ・センキュウ・ブクリョウ・ビャクジュツ・タクシャ・シャクヤク
まとめ
診断・治療や医薬品の使用については、利用者ご自身の判断において医師、薬剤師、登録販売者にご相談ください。また、医薬品の効果には個人差がありますのでご注意ください。
冷え性を改善するためには
・冷暖房は控えめにし、シャワーではなく入浴を心がける。
・日頃から適度な運動を心がける。
・体を温めるような服装をする。
・規則正しくバランスの取れた食事をし、冷たいものをとりすぎないようにする。
など日頃から生活に工夫をすることも必要です。